FORTUNE 事件の被害者の回想録 2 (初渡航編)
FORTUNE 事件の被害者の回想録 2 (初渡航編)
面接編の続編です。伊藤誠の側近だった宮澤源二の面接を受け、FORTUNEのバイヤーとして採用され、すぐにタイに渡航しています。タイでの金の買付と換金スキームの詳細が描かれている貴重な回想録です。
★AIによる音声読み上げ版(10分42秒)
2023年 FORTUNE事件の回想録 2 (初渡航編)
1. バイヤー内定
2022年10月4日の面接が終わり、合否連絡という形式ばったものはなく、即日、バイヤー採用となりました。
その場で面接担当者の宮澤源二とLINEを交換しました。
私のスケジュールを伝えたところ、私の最初の渡航は 2022年10月15日と決定されました。
時計の購入方法は国によって異なり、また、いろいろなパターンがあるが、現地で社員やベテランバイヤーがサポートするので安心して欲しいということでした。
また、時計の買付にあたり、売買契約書がある事を伝えられ、事前にLINEでその売買契約書が送付されてきました。
売買契約書は、委託契約のようになっており、不明瞭な点がいくつかあった為、詳しく内容を尋ねました。
フォーチュンの社員のTという人間から、全て、詳しく回答がなされました。
渡航先については、コロナ渦がまだ完全に開けていないという事から、海外渡航の規制があまり厳しくないタイになると伝えられました。
そして、宮澤源二から、タイのバンコク行きの航空券とホテルの予約確認書がPDFで送付されてきました。
売買契約書については、タイへの渡航の当日にFORTUNEの管理職の人間が成田空港に持って来てお渡しするとのことでした。
2.成田空港
私は、2022年10月15日の最初の渡航の当日、成田空港で成澤一仁という人間と待ち合わせになりました。
成田空港には、私のほかに、当日、一緒にタイへ渡航するバイヤーが2名、おられました。
私と宮澤源二を含めた 4名が一緒にタイのバンコクに渡航することになりました。
その後、私たちは、成田空港で軽い軽食を取りました。
朝食を取っていると、FORTUNEのゼネラルマネージャーの中野正人という男性が現れました。
私たちは売買契約書に署名、捺印し、一部を中野正人に手渡しました。
中野正人と成澤一仁は、契約書を取りに来ただけで、バンコクへは行かないということでした。
私と宮澤源二を含めた 4名は成田空港からタイの首都バンコクへと旅立ちました。
中野正人が偽名であり、本名は伊藤誠であることを知ったのは、2023年11月末のFORTUNE事件が発覚してからのことでした。
3.バンコク
タイのバンコクには、現地時間の夕方頃に到着しました。
空港で日本円を少しタイの現地通貨であるバーツに換金し、そのままホテルへ直行しました。
宿泊先のホテルは、バンコクの中心地にあり、比較的、良いホテルでした。
私たちは、ホテルにチェックインした後、バンコクでは有名なクルーズ船に乗り、4名全員で夕食をとりました。
そして、翌日は早朝7:00に、朝食のとれるホテルロビーで待ち合わせとなりました。
翌朝、ホテルロビーへ行くと、前泊していた別の4名のバイヤーが既に朝食をとっていました。
私達は、そこに合流して、朝食を食べながら、今日の移動方法と予定を確認しました。
また、バイヤーは、自己紹介やバイヤー歴について、会話しました。
前泊していた4名のバイヤーの話によると、タイでの買付は、まず、クレジットカードで金を購入して、
その金を現金(タイのバーツ)に換金し、その現金で時計を購入するというものでした。
どうして、クレジットカードで金を購入し、その金をタイバーツの現金に換えて、時計を購入するか確認をしたところ、
タイのバーツで購入した方がディスカウントが出来て、金を安くで購入できることと、クレジットカードのショッピング枠が
少ない人でも数名分の現金を合算して、良い時計を仕入れることができるからという回答でした。
そうこうしていると、成田空港で会った、フォーチュンのゼネラルマネージャーの中野正人からLINEで指示がきました。
朝8時過ぎには金の買付場所へ到着するようにとのことでした。
金のお店の開店は朝9時であるが、非常に混雑するため、並んで待っているようにとの指示でした。
4.金(ゴールド)の買付
朝食を済ませ、私たちバイヤー一同は、電車で金のお店があるチャイナタウンへ向かいました。
金のお店は、Wat mangon station(ワットマンコン駅)の1番出口を出て、徒歩で数分のチャイナタウンにある和成興大金行有限会社(Hua Seng Heng Goldsmith)というお店でした。
宮澤源二と私、バイヤー5名は、順番にクレジットカードで金を購入していきました。
W さんは、前泊で既に金の買付業務は完了しているが、タイ語が話せる為、現地サポートという事で一緒に同行しました。
私たちは、順番にクレジットカードのショッピング枠の金額を伝えていきました。
仮にクレジットカードのショッピング枠が200万円であれば、その金額から、クレジットカード利用手数料を引いた、
95%掛けのバーツの金額を店員に伝えて、金を購入していきました。
1人ずつ、金の買付を終えると、都度、日本にいる中野正人にLINEで購入金額を報告しました。
Y さんは、ショッピング枠の金額が低いクレジットカードが10枚程あり、換金までに、かなりの時間を要していました。
宮澤源二を含め、6名全員が金を購入し終えたのが、現地時間で13時過ぎでした。
その後、今度は、そのお店で購入した金をそのままタイのバーツへ換金しました。
サポート役の宮澤源二は、全員分のタイのバーツの現金をボストンバックに入れて、回収していきました。
宮澤源二は、そのタイのバーツの現金で、代表者として時計を買い付けに行くとの事でした。
5.時計の買付
ショッピング枠が余ったクレジットカードや、金のお店では利用できなかったクレジットカードで、
IWC の時計店に行って、中野正人が指定した時計を購入するように、中野正人からLINEで指示がありました。
中野正人からLINEで指示された時計店は、バンコクの中心街のサイアムパラゴンというデパートの中にある IWCの時計店でした。
私を含めた 5人のバイヤーは、電車で IWC の時計店に向かいました。
IWCの店舗に到着したのは、15時頃でした。
中野正人からの指示で、デパートでも値引きをしてくれるので、ディスカウントしてもらえるか聞くようにとの指示がありました。
バイヤー5名で 3本のIWCの時計を購入するのですが、それぞれのクレジットカードのショッピング枠の残額がバラバラであることや時計1本につき、3枚までしかクレジットカードを利用できないことから、5名のクレジットカードの残額を計算して買い付けることはパズルのような作業でした。
また、Yさんのクレジットカードが突然の利用停止や、各バイヤーが把握していたショッピング枠の限度額が違うことが判明したなどの
トラブルがあり、時計3本を購入できたのは、夜の20時過ぎでした。
ランチのための休憩もなく、トイレに行ったり、水を飲む時間ぐらいしか休憩は取れず、全員が疲労困憊でした。
特に女性のバイヤーは皆、疲れ果てていた為、一緒に遅い夕食をとり、ホテルに戻りました。
6.タイからの帰国
IWCで買い付けた時計は、中野正人からの指示により、私が代表として持ち帰る事になりました。
FORUTNEから、日本の税関で支払う消費税に相当する金額が、私の銀行口座に振り込まれました。
私達は、2022年10月18日の飛行機でバンコクから成田空港に帰国しました。
通常の買い物と同様に、タイではタックスリファウンドの申請を行い、消費税還付を受けました。
成田空港に到着してからは、税関で関税手続きを行う為、購入した時計や領収書などを提示し、
税関の近くにあるATMで現金をおろして、税関職員からの指示があった金額を納付し、税関手続きが終わりました。
私達は成田空港を出ると、中野正人から指示された上野に向かいました。
上野につくと椿屋珈琲店で中野正人と待ち合わせをしました。
中野正人に時計を渡したあと、現物の確認がありました。
その後、面接時に言われた通り、クレジットカードの決済金額合計の5%の金額を報酬として受け取りました。
全て終了したのは、到着日の夜21時頃でした。
私は、かなり疲労困憊したものの、実際に正規店で時計を購入し、税関手続きを終えて、その報酬を受け取る一連の流れがあり、
特に怪しさは覚えませんでした。
バンコクに到着してからも、中野正人からLINEで細かく指示があり、フルサポートはしてもらえているようには感じました。
また、疑問点などを聞いても、すぐに回答が来て丁寧な印象を持ちました。
以上、
和成興大金行有限会社
金を買い付けるタイのショップ。バンコクのチャイナタウンにある。このショップの中だけで、金を買い付け、すぐに現金に換金することができる。


タイに同行した宮澤源二氏
株式会社FORTUNEでは、バイヤーでありながら社員のように振る舞い、伊藤誠の側近であった人物。この被害者の回想録のように、2022年の初めから2023年8月頃まで、多数のバイヤーの香港・マカオ・タイの渡航に同行していた。伊藤誠からの信頼が厚かった人物であった。
